北嵯峨名古曽町の家は、昭和の高度経済成長期に建てられたこだわりの邸宅。
古く傷んでいましたが建物はしっかりしており、あちこちに、今では入手困難な素材や職人技が残されていました。
それらを何とか残したいと考えて、彩里は「スケルトン渡し」というリノベーションを選びました。

「スケルトン渡し」は、構造体、屋根、基礎など重要でコストがかかる部分に、集中的に手を入れたリノベーション。
内装工事後は見えなくなる部分をしっかり工事して引渡し、設備機器や内装はお客様の好みに合わせて仕上げるという方式です。
内装工事の便宜のために、基本的には、古い床も壁も撤去した、ガランとした状態でのお引渡しになります。その段階で、建具や造作なども廃棄するのが普通の流れです。
とはいえ、昭和のこだわりの邸宅には、時として見過ごせない「古きよきもの」があります。それらをあえて残すことを、ご提案する場合もあります。
大切にされてきた古きよきものは、暮らしをゆたかに彩る力を持っています。今ではもう、つくれる職人がいなくなっていることも珍しくありません。
何よりも、撤去するのはある意味簡単ですが、あとから惜しんでも、もう取り戻すことができないのですから。
この北嵯峨名古曽町の家で私たちが残したいと思ったのは、門、庭石、そして客間のふすまの上にあった立派な欄間でした。
ぜひ見ていただきたいポイントを、ご紹介しましょう。
●敷地の南東角に堂々たるたたずまいを見せる和風の門


和風邸宅の顔となる、風格ある門。
一部を銅板ふきとして軽やかさを出した屋根と、タケを模した和風の樋と集水桝が、見事に調和しています。
傷んではいましたが、元の雰囲気をそのままにリノベーションしました。
塀は新しく設置し、同時に、門の横に車2台分の駐車スペースを新設しました。
●木の格子がお客様をお迎えする、贅沢な和風アプローチと名石
和風引き戸の玄関は、大きく屋根が張り出したゆとりある空間。木製格子越しに庭木が風にそよぐ光景は、何とも言えないよい風情です。


アプローチ脇の石は「佐治石」です。
鳥取の佐知川流域で産出される変成岩で、日本庭園で愛用されてきた名石。現在では採取が禁じられているという貴重なもので、有名な足立美術館(島根)の庭園にも、多く使われています。
光の具合によっては緑色の模様があらわれ、水にぬれると、黒く美しい光沢を放つとか。
ってことで、水、かけてみました(写真2枚目)。つやつやに光りましたね。


●昭和の欄間
玄関から入って正面には2間続きの和室があり、立派な欄間があります。


和室自体が珍しくなっている現代。この空間は、きっと広いリビングルームに、あるいはギャラリーやアトリエになるのだろうかと考えつつも、やはりこの欄間を撤去する気持ちにはなれませんでした。
工事中の現場で写真を撮り、図案を起こしてみると…。

マツの木越しに見える山、海と小島。小高い山の上にある建物、そして橋…。東海道を行く江戸時代の旅人が見たであろう、日本の原風景が浮かび上がりました。
この部屋をリビングルームに仕上げた場合のイメージパースに、欄間を嵌め込んでみたのがこちら。
見事な「和モダン」空間が出来上がりました。


せっかくの広い空間なので、ほかにも色々と用途を考えて、イメージイラスト化してみました。
シンプルな洋風リビングルーム、アトリエ&プライベートギャラリー、板の間と和室の客間…。



木彫ゆえに極限まで省略された曲線は、一周回って最新のデジタルアートのようでもあり、和・洋、プライベート・パブリックのどんな空間にもスッキリとおさまりそうです。
「欄間、残してよかった…」
と、しみじみ思ったのでした。
北嵯峨名古曽町で、
このこだわりの品々を活かして、あなた好みのお住まいを一緒につくりませんか。
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