京都市上京区、北野天満宮にほど近い上七軒は、かつては京都有数の花街としてにぎわった場所。現在は京町家をリノベーションした飲食店などが立ち並ぶ、おしゃれレトロな街になっています。
石畳が敷き詰められた風情ある上七軒通りから一筋入ったところに、この家はあります。
ご相談
相続した古い京町家。お客様はこの場所での居住や事業の予定がなく、なるべく早期に売却したいというご希望をお持ちでした。


彩里からのご提案
早速現地調査をおこないました。
一見すると京町家の風情がそのままに残された、魅力的な建物でした。
しかしよく見てみると、壁のあちこちが剥落しており、柱や梁、建具などの細かいところがかなり傷んでいます。建物自体も傾いており、現状のまま住める状態ではありませんでした。
この場合、考え方は3つあります。
(1)現状の「古家」のまま販売し、次のオーナーにすべてをゆだねる
(2)住める状態まである程度のリフォームをしてから販売する
(3)建物を解体して「土地」として販売する
(1)の場合、この建物の状態では、正直なところすぐに買い手がつくとは考えられませんでした。それでは「早期売却」のご希望に添えません。
(2)が、現実的な方法かもしれません。しかしこの場合は「ある程度」のリフォームに時間がかかります。またリフォーム費用はお客様の負担になってしまいます。
(3)建物を解体してしまえば土地だけとなり、流通はしやすくなると思われます。ただ、やはり解体費用と時間がネックになります。
この建物は京町家です。しかも、上七軒にほど近いという、歴史的文化的な価値がある立地です。この場所の京町家が1軒失われることは、大きな文化的な損失にもつながります。
また、このエリアは「京都市京町家の保全および継承に関する条例」による保存地域に指定されているために、解体1年前までに京都市への届け出が必須となっていました。
京都市は、貴重な財産である京町家の保存・継承のために「京都市京町家の保全および継承に関する条例」を定めています。
●「京町家を未来へ 京都市京町家の保存及び継承に関する条例」 by京都市
様々な事情を検討した結果、彩里による買い取りをご提案することにしました。
これで、「早期売却」というお客様の一番の希望におこたえすることができます。そして、京町家を1軒、解体の危機から守ることができました。
京町家再生へ
西陣・北野エリアは、多くの名所旧跡がある観光客にも人気の場所。交通の便もよく、メインストリートからちょっと入ったこの場所なら、居住用やセカンドハウスとしてはもちろんのこと、物販店、飲食店、宿泊施設など、様々に活用できそうです。
また、現状はかなり傷んでいるとはいえ京町家です。このエリアの不動産物件として、これは最大の魅力になりえると考えました。
京町家再生にあたっての方針は、次のように決めました。
(1)今後の活用について、選択肢を残す
住宅、物販店など用途の決め打ちをしてリノベーションを実施してしまうと、この京町家がせっかくたくさん持っている将来の選択肢を狭めてしまうことになります。
長年受け継がれてきた歴史と風情ある建物ですから、その魅力を存分に発揮して活用されてほしい。今後の自由度を高めるために、リノベーションの方針は内装仕上げをしない「スケルトン」と決定。間取りはもちろん、キッチンや浴室など水回りを含めて、すべて購入後にオーナーが用途に応じて自由に選択できるようにしました。


(2)この先、何十年も使われることを想定する
次のオーナーに安心して使っていただけるように、建物の骨格は残し、ジャッキアップして新しく基礎を打つなど全面的に耐震補強を実施、ほとんど骨組みだけになった家を丁寧におこしていきました。
また、床は撤去し、床下や柱材の傷んだ部分は取り替えたり、メツギ等の処置を施しました。
これらは、内装工事後は見えなくなってしまう部分です。しかし彩里の京町家再生物件として今後何十年も活躍してもらうために、この見えない部分にこそしっかり費用をかけるべきだと考えました。



(3)京町家の「顔」部分だけは先行仕上げ
スケルトンではありますが、玄関横の和室だけは最低限の内装で仕上げました。道路に面した開口部や階段などの位置から、今後大きく間取り変更がないと思われる部分だからです。
京町家のいわば「顔」にあたる場所ですから建具類も新調し、格子越しに道行く人のすがたが垣間見える、風情ある空間になりました。


リノベーション後、販売を開始してほどなくご縁がありました。現在は新しいオーナーが、京町家の暮らしを満喫されています。

